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ネンジュモ目の藻を属レベルで分類するためには、異質細胞がトリコームのどこに形成されるか、つまりトリコームの片側に偏っているか両側に形成されるかまたは中間部に形成されるかを確かめなければならない。さらに、アキネートはトリコームのどこに形成されるか、アキネートと異質細胞が接しているか、栄養細胞にはガス胞があるか、トリコームの形は先端部と中央部で同じかどうかなども確認しなければならない。栄養細胞のみのトリコームでは属レベルの分類は行うことができない。
種レベルの分類では、栄養細胞の形と大きさ、アキネートの形と大きさ、トリコームの形と大きさなどを確かめなければならない。アキネートが観察できないと、種レベルの同定を行うことはできない。採集の時期を変えてアキネートを観察するか、培養してアキネートの形成を誘導するかしないと、種は分からないのである。アキネートの観察と大きさの測定は、十分に成熟したもので行う必要がある。
トリコームはまっすぐか、規則的かやや不規則ならせん形、または不規則に曲がり絡み合っている。栄養細胞にはガス胞がある。異質細胞は球形または楕円形で、栄養細胞とほぼ同じ大きさで、トリコームの中間に形成される。アキネートは球形、楕円形、円筒形で、幅も長さも栄養細胞や異質細胞より大きく、異質細胞の近くにできる。
トリコームはまっすぐか、または規則的かやや不規則ならせん形である。栄養細胞にはガス胞がある。異質細胞は栄養細胞とほぼ同じ大きさの球形で、トリコームの中間に形成される。アキネートは球形で、栄養細胞や異質細胞より明らかに大きく、異質細胞の両側または片側に必ず隣接してできる。
図9
以下にドリコスペルマム属とスファエロスペルモプシス属の検索表を示す。
| 広義のアナベナ属の種の検索表 | |
|---|---|
| 1a 栄養細胞にはガス胞がある。球形のアキネートが異質細胞の両側または片側に必ず隣接して形成される | Sphaerospermopsis属 2 |
| 1b 栄養細胞にはガス胞がある。アキネートの形と異質細胞との位置関係は1a以外 | Dolichospermum属 5 |
| 2a トリコームはらせん状 | 3 |
| 2b トリコームは直線状 | 4 |
| 3a トリコームのらせん径は約20μm以下、らせんは規則的で密 | S. reniformis |
| 3b トリコームのらせん径は約25μm以上、らせんはやや不規則 | S. oumiana |
| 4a 栄養細胞の幅は4.0−4.5μm | S. aphanizomenoides |
| 4b 栄養細胞の幅は6.0−8.9μm | S. kisseleviana |
| 5a アキネートは異質細胞に隣接するか、栄養細胞1、2個隔ててできる | 6 |
| 5b アキネートは異質細胞から栄養細胞3個以上離れたところにできる | 9 |
| 6a アキネートは円筒形 | 7 |
| 6b アキネートは楕円形 | 8 |
| 7a トリコームはほぼ規則的ならせん形、栄養細胞はレモン形 | D. akankoensis |
| 7b トリコームは不規則に曲がり絡み合う、栄養細胞は円筒形 | D. mendotae |
| 8a トリコームは不規則に曲がり絡み合う、アキネートは異質細胞の両側に隣接する | D. lemmermannii |
| 8b トリコームは直線状で束をつくる | D. affinis |
| 9a アキネートは球形 | 10 |
| 9b アキネートはレモン形 | D. citrisporum |
| 9c アキネートは楕円形 | D. crassum |
| 9d アキネートは円筒形または長楕円形 | 13 |
| 10a トリコームは直線状 | D. smithii |
| 10b トリコームはらせん状 | 11 |
| 11a トリコームのらせん径は約80μm以下、らせんは規則的 | D. ucrainicum |
| 11b トリコームのらせん径は約80μm以上、らせんはやや不規則 | 12 |
| 12a 栄養細胞の幅は9-11μm | D. mucosum |
| 12b 栄養細胞の幅は6-7μm | D. minisporum |
| 13a トリコームは直線状 | 14 |
| 13b トリコームは規則的またはほぼ規則的ならせん状 | 16 |
| 13c トリコームは不規則に曲がり絡み合う | D. flos-aquae |
| 14a 栄養細胞の幅は5-10μm | 15 |
| 14b 栄養細胞の幅は8-11(-15)μm | D. planctonicum |
| 15a アキネートと栄養細胞の比は1.6-1.8 | D. viguieri |
| 15b アキネートと栄養細胞の比は2.4 | D. macrosporum |
| 16a トリコームのらせんは規則的で密 | D. psudocompactum |
| 16b トリコームのらせんはほぼ規則的 | 17 |
| 17a トリコームのらせん径は25-40μm | D. spiroides |
| 17b トリコームのらせん径は50-250μm | D. circinalis |
以下の種は日本での観察が限られており、上記の検索表に含めていない。
トリコームは単独で浮遊する。栄養細胞にはガス胞がある。トリコームの中央部の隣り合う2つの細胞がそれぞれ分裂し、隣接する側に形成された細胞が異質細胞に分化する。したがって一時的にトリコームの中央部に異質細胞が2個並んで形成されるが、トリコームは2つの異質細胞が接する部位で分断するため、トリコームはその両端に異質細胞をもつことになる。アキネートは楕円形または円筒形で栄養細胞より大きく、異質細胞から離れて1個または2個または数個連続してできる。 本邦ではA. arnoldii AptekarおよびA. circinalis (G.S.West)Wołosz. et V.V.Mill.が報告されているが、大発生したという記録はない。
図10
トリコームは糸状で浮遊する、単独であることはまれで多数集合して束を形成する。トリコームはまっすぐかゆるく曲がり、全長を通じて同じ幅または先端部がやや細くなるが、先端は円いか平坦で針状にならない。栄養細胞は円筒形、ガス胞がある、先端細胞はやや長い。異質細胞は円筒形または楕円形、栄養細胞とほぼ同じ幅である。アキネートは介生的、円筒形で栄養細胞より長く、異質細胞から離れて形成される。
トリコームは糸状で単独で浮遊する。トリコームはまっすぐかゆるく曲がり、先端に向かって段階的に細くなり、尖って終わる。栄養細胞は円筒形、ガス胞がある、先端細胞は明らかに細く尖っている。異質細胞は円筒形または楕円形、栄養細胞とほぼ同じ幅である。アキネートは介生的、円筒形で栄養細胞より長く、異質細胞から離れて形成される。本邦では今のところC. issatschenkoi (Usa
ev) Rajaniemi et al.だけが報告されている。
図12
以下にアファニゾメノン属とクスピドスリクス属の検索表を示す。
| 広義のアファニゾメノン属の種の検索表 | |
|---|---|
| 1a トリコーム先端の細胞は次第に細くなり、針のように尖って終わる | Cuspidothrix issatschenkoi |
| 1b トリコーム先端の細胞は中央部と同じかわずかに細くなる | Aphanizomenon属 2 |
| 2a トリコームは束になって浮遊する | 3 |
| 2b トリコームは単独で浮遊する | 4 |
| 3a 細胞の幅は(3.7‐)4.5‐5.6μm | A. flos-aquae |
| 3b 細胞の幅は3.0‐4.2μm | A. yezoense |
| 4a トリコームはまっすぐ、中央部と先端部で細胞の幅はほぼ同じ | A. klebahnii |
| 4b トリコームはゆるく曲がる、先端部で次第に細くなる | A. paraflexuosum |
トリコームは短い糸状で単独で浮遊する。トリコームはまっすぐからせん状に湾曲する。栄養細胞は円筒形でガス胞がある。異質細胞は必ずトリコームの末端に形成され、円筒形または長い円錐形。アキネートは円筒形で異質細胞から離れて、または隣接して形成される。本邦では C. curvispora M.Watan.とC. raciborskii (Wołosz.) Seenayya et S.Rajuの2種が報告されている。どちらも大発生してアオコを形成することある。またシリンドロスパーモプシンやアナトキシンといった毒素をつくることも知られている。
図13
図14
トリコームは基部に異質細胞があり、先端部に向かって細くなり、毛状になって終わる。トリコームが異質細胞をもつ基部を中心にして放射状またはまばらに集合し、球形または半球形の郡体をつくる。アキネートは異質細胞に隣接する。本邦ではG. echinulata (J.E.Sm. et Soverby) P.G.Richit.が報告されている。
図15トリコームは単独で浮遊する。トリコームはまっすぐか湾曲し、両端に向かって細くなるが毛状になることはない、粘質の鞘をもたない。異質細胞をつくらない。アキネートはトリコームの中央部に形成される。本邦ではRaphidiopsis curvata F.E.Fritschet M.F.Richが記録されている。
トリコームは単独で浮遊し、先端に向かってやや細くなる。栄養細胞にはガス胞があり、異質細胞とアキネートはトリコームの中間部に形成される。培養中に分枝を形成したことから、当初スチゴネマ目で唯一の浮遊性種としてU. natans M.Watan.が報告された。ところが、その後行われた遺伝子解析によって、本種がネンジュモ目の1グループに含まれること、しかしドリコスペルマム属、スファエロスペルモプシス属、クスピドスリクス属、ノデュラリア属などから明瞭に区別されることが明らかとなった。形態的には、分枝がない状態では広義のアファニゾメノン属と、さらに異質細胞がなくアキネートをもつ状態ではラフィディオプシス属と区別することは難しい。今のところ、U. natans1種のみが知られており、日本以外からの報告はない。