講座の受講者

 受講者の数は当初は生物顕微鏡の数によって制限を受けました。昭和63年の講座のときは16台備わっていたので、これに植物研究部の訪問者用の顕微鏡を加えて、各受講者が一台ずつの生物顕微鏡と実体顕微鏡を使用するとして22名程度の受講が認められることになりましたが、受講希望者が多くて、とてもこれでは足らず、この年は受講者のうちの何名かには顕微鏡一台を二人で共用して実習願った日がありました。次の年はある民間企業にお願いして普通の生物顕微鏡8台と、講師と受講者が同時に同じプレパラートを観察できる鏡筒の二つ備わった指導用顕微鏡(ティーティング・マイクロスコープ)3台を、菌類分類学講座用として科博に寄贈頂き、これに植物研究部の訪問者用の顕微鏡を加えて約30名の参加が可能になりました。しかし、現実には一人の講師が30名の実習の指導を行うのは到底無理で、20名を目安に参加者を制限することとしました。それでもなんとか参加させて欲しいという方々があとを絶たず、例えば、現在の職場でどうしても菌類の分類の知識が必要で、しかも大学では詳しい各論の講義・実習のカリキュラムはなかったので、困り果てている、せめて実習時は見学するだけでもよいから参加させてほしい、という要望もしばしばあり、時に30名を超える参加を認めたことがありました。そのような受講者の中には、地方公共団体で、文科系の大学卒業者が上下水道や食品衛生の部署に配属された、という例も何名かありました。受講者の中には九州や北海道から来られる方も少なくありません。沖縄から参加された例も数名ありました。

 受講者の内訳は、菌類同好者が最も多く、その次が生物系や農学系あるいは医学系・家政学系の大学生・大学院生です。次いで企業の実務者・研究員、官公立研究所職員、小・中・高校の生物に興味をもつ教員、大学教職員と続きます。身分を明かされない受講者が意外に多いため、このような区分を不透明にしています。科博で開催される講座なので科博友の会の会員(主婦やご隠居を含む)がこのような分け方とは関わりなくかなり受講されます。また、時には日本の最高水準の生物学者も、本講座を受講されることがあり、若い講師がそれを喜ぶ半面、煙たがる一幕もありました。菌類同好者の内訳は主婦、ご隠居、高校生などの他、漢方薬局の主人や大学の哲学の教授、農芸化学・発酵工学や植物病学の分野の退官された先生方、音楽家、画家など多彩です。

 以上のような参加者の顔ぶれのため、常に講師陣を悩ますのが、どの程度のレベルの講義・実習をすれば良いのか、という点です。これに対して私たちは、菌類の分類学研究を志す大学の理学部生物学コースの学生や、植物病学、発酵工学・農芸化学などに分属した大学生や大学院生を対象とするレベルで詳しい各論を中心に、とお願いしています。多くの参加者は必要に迫られ、あるいは菌類同好者としての興味から、詳しい各論に“飢えている”、と私たちは感じています。勿論、系統・進化学的な内容や、最近の分子系統学的な研究の紹介も、折りに触れて各論に組み込んで紹介して頂いています。

 趣味の一環として参加される主婦やご隠居の、講義に対する理解力・顕微鏡の使い方は、一般的には大学生や大学院生と同等か、ときにはそれを凌駕していることが多く、講座の妨げになることはまずありません。恐らく科博の開催する様々な講座を受講し、顕微鏡の使い方などに慣れておられるためでしょう。むしろ大学生や名誉教授の中に顕微鏡を使うのは初めてだ、という参加者が少なくありませんでした。このような顕微鏡の使い方の初心者のために、数年前から、各論の講座の前に「顕微鏡の使い方」という講習を行うことにしました。

 ところで、どの講座にも同じような人数の受講者が参加される訳ではありません。この14年間の実績でみると、菌学概論、糸状不完全菌、不整子嚢菌綱、ハラタケ目、ヒダナシタケ目、菌類分子系統学などの講座に受講希望者が多く、クロボキン目、サビキン目、小房子嚢菌綱、キクラゲ類などにはやや少ないようです。また、どのような身分・職種の受講者が多いかについても講座ごとに差があり、例えば糸状不完全菌類、コウボキン類などの講座には企業の研究者・実務者が多く、ハラタケ目の講座には食菌栽培関係者やキノコ同好会会員などが多数参加されます。昭和63年(昭和62年度)から平成12年度までの14年間の身分・職業別の講座受講者数を表 1.に、また、講師の方々の職業を表 2に示しました。


表1.職種別の講座受講者数 (昭和62〜平成12年度前期)

菌類愛好者 319名
大学生・大学院生 285名
企業研究所 職員 260名
官公立研究所 職員 218名
小・中・高校教員  74名
大学教職員 50名
その他(不明)  106名
合計 1,312名
延べ人数合計 3,461名

表2.講師の職業 (昭和62〜平成12年度前期)
 
官公立研究所研究員(嘱託を含む) 22名
大学教員(元大学教員を含む) 19名
企業の研究所研究員 7名
小・中・高校教員(元教員を含む) 6名
大学院学生(終了後未就職の者を含む) 1名
その他(進学指導塾教員など) 1名



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