さて、菌類分類学講座の内容については本稿の後半の部分でさらに詳しく解説しますが、ここでそのあらましを紹介します。
基本的には菌類の全分類群の解説・実習を各年度毎に本講座で網羅する方針で計画しましたが、現実には講師陣の都合もあり、また年間の講座開催日数が20日間以上になると、講座準備の当事者がお世話をしきれない、という制約もあって、毎年かなりの分類群の講座を除いています。現在は2年間でほぼ全分類群を網羅している状態です。その他、例えば水生鞭毛菌類や子嚢菌類のラブルベニア綱などは、特殊な菌群のために、開講の間隔を3年とか4年に一度としている分野もあります。
講座の構成パターンは、まず菌学概論を初日におき、ついで変形菌類、鞭毛菌類、接合菌類、子嚢菌類、担子菌類、不完全菌類の順で各論を進める方針をとってきましたが、講師の方々の都合で、順序どおりには殆どできません。
所帯の大きい子嚢菌類、担子菌類、不完全菌類などは、さらに講座を細分しています。すなわち、子嚢菌類は子嚢コウボ類、不整子嚢菌綱、核菌綱、チャワンタケ綱、ラブルベニア綱、小房子嚢菌綱などに、担子菌類はサビ菌目、クロボキン目、キクラゲ類、ヒダナシタケ目、ハラタケ目、腹菌亜綱などに、また不完全菌類は糸状不完全菌類、分生子果不完全菌類などに分けています。さらに、鞭毛菌類を水生菌類と陸上植物の寄生性菌類に分けたり、接合菌門をケカビ目・昆虫寄生菌類・トリコミケテス綱に、子嚢菌類の核菌綱を胴枯病菌目、ボタンタケ目・バッカクキン目などに細分して各々一日分の独立した講座としたことがあります。また、生態学的に似た生活様式を持つが、含まれる菌類の分類群が雑多な菌群、例えば昆虫寄生菌のような菌群の講座は、別に独立した講座を設けたり、その講座の日に複数の講師に担当をお願いしたこともありました。また、日本の古生物学の分野では、古菌類学を専攻している研究者がいないので、本講座で古菌類学を扱ったことがあります。
これらの分類群すべてを一人の講師が担当し、実習資料を準備して講義・実習を行うことは、分類群が多岐に亘ることや、種数の多さの点で、時間的・労力的に不可能です(日本産の菌類種数は、1995年の環境庁の集計で、約16,500種に達し、毎年40−60種の新種または日本新産種が報告されています。いずれは日本産の菌類の種数は3万種に達すると推計されています)。特に鞭毛菌類の遊走子の遊走子嚢からの放出の観察、不完全菌類の分生子の形成法の観察などには、実習の当日に最も良く観察できるような培養のタイミングを調整する必要があり、かなりの時間と高度の専門知識・経験を要します。
講師には大学の教官の他、農林水産省や厚生省の研究所の研究員、民間企業研究所の研究員、中学や高校の先生方、長年趣味として菌類を調べてこられたいわゆるアマチュアの方、さらには学位論文をほぼまとめ終わった大学院生にお願いしたこともあります。大学院生を起用した例では、他に専門家がいなかったためもありますが、ときには講座を企画する係りの意向で、その大学院生は教えるために真剣に勉強するであろう、いい機会だ、という別のねらいを加えたこともここで白状しておきたいと思います。その他、科博植物研究部の2名の研究員も、勿論講師を引き受けてきました。
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