櫻井欽一博士(1912-1993)

櫻井欽一博士は,昭和7年19歳の若さで,日本鉱物誌第三版編輯委員会委員長の福地信世に認められて委員に推薦されている.その書は日本産鉱物の種類を系統分類順に配列し,それぞれについて産地・産状・共存鉱物・形態・研究データを記述するとともに,そのもとになった標本を保存しておくというものである.博士は家業の料亭『ぼたん』の経営のかたわら,ほとんど独学で鉱物学を修めながら標本と情報の収集に努力し,その一部は昭和22年12月に日本鉱物誌第三版(上)として,東京大学鉱物学教室伊藤貞一教授との共著として公表された.英国の専門誌Mineralogical Magazineは,「戦後の混乱の中でなされた奇蹟の出版」という書評を掲げ,その刊行に最大の敬意を払った.博士は昭和17年,国立科学博物館の前身である東京科学博物館に嘱託として勤務し,昭和25年に新鉱物『亜砒藍鉄鉱』を,同27年に新鉱物『湯河原沸石』を記載した.昭和39年に,国は紫綬褒章を授与して博士の功に報いた.時に博士51歳であった.


欽一石 Kinichilite

静岡県下田市蓮台寺河津鉱山産.模式標本(NSM-M23380).六方晶系.1981年堀 秀道氏らによって記載された新鉱物で,櫻井欽一博士に献名された.六角柱状ないし針状結晶の集合をなしており,左図中での最大長約2mmで,他の部分は石英である.鉱山の酸化帯に産出するが,鉄もテルルも最高位イオン価の形をとっていない点で特異な生成条件を秘めた二次鉱物である.


 櫻井コレクション(鉱物)は,櫻井欽一博士が小学生の頃から収集された日本最大の個人鉱物コレクションで,日本産鉱物種約1000種のうち90%以上を網羅しており,また世界全体の鉱物種4000種の約60%をふくんでいる.御遺族から当館に寄贈されたのを機会に,平成7年6月から7月にかけて特別展が開催されたが,その一部をここに紹介する.

元素鉱物 硫化鉱物(1), 硫化鉱物(2) 酸化鉱物 ハロゲン化鉱物 炭酸塩鉱物 硼酸塩鉱物
亜テルル酸塩鉱物 硫酸塩・クロム酸塩・タングステン酸塩鉱物 燐酸塩・砒酸塩・バナジン酸塩鉱物 珪酸塩鉱物(1), 珪酸塩鉱物(2), 珪酸塩鉱物(3), 珪酸塩鉱物(4), 珪酸塩鉱物(5) 有機鉱物 科博鉱物標本データベース

 


[ ホーム ] [ 地学研究部 ] [国立科学博物館の研究活動]