標本に関すること


Database for Aquatic-vertebrate Science

液浸標本のラベル

執筆:松浦啓一

魚類標本は、液浸標本として保管されることが多いので、耐アルコール・ホルマリンに注意をしないとせっかくのラベル情報が、消滅しかねません。この問題は博物館のキュレーターを悩ませてきました。それに加え、コンピュータ化によって新たな問題も生じてきました。

耐水紙
国立科学博物館では、耐水ラベルを栗原洋紙店から購入しています(連絡先は以下のとおり)。

住所 東京都港区西新橋2-21-2
TEL 03−3431−1171
FAX 03−3459−8995

耐水紙の大きさは注文によって自由に変えられます。データを手書きによって記入する場合には、採集地や採集者、採集年月日、学名などの見出しを印刷してもらうと便利です。国立科学博物館ではコンピュータ導入までは、2種類のラベルを採用していました。一つは採集地などが記入された通常のもの。もう一つは標本びんの中に入れる貸与、交換、査定変更などを記入する小型のラベルです。最近は、すべてプリンタでラベルをつくっています。A4判の耐水紙に三件分のデータを印刷し、はさみやカッターで三等分します。

耐水紙で印刷されたラベル
拡大できます
ラベルのサイズ
4判の横幅があればラベルを標本びんの中に人れても倒れません。外からラベルの情報を確認できるので、新たに標本びんの外側に別のラベルを貼る必要がなくなります。
また、A4判ならば、大量のデータを書き込むことができます。国立科学博物館ではひとつの標本に対して50項目以上のデータがあり、A4判だとほとんどの情報を表示することができます。項目が少なければB5判でも大丈夫ですが、ラベルが標本ビンの中で倒れることがあります。小さな140ccや450ccの標本ビンでも、ラベルを巻き込むようにすれば入ります。科コード、標本番号、学名なとの最小限必要な項目を標本びんの外から見ることもできます。大きな梅酒びんや塩化ビ二一ル性の2リットルビンを使用する際も、ラベルは倒れません。

ミシン目をつけた連続紙を特注することもできますが、紙の無駄が多く、単価が高くなるなるのでA4判を切断する方法を採用しています。

耐アルコール性プリンターリボン
現在主流のインクジェットプリンターやレーザープリンターで出力したラベルは耐アルコール性に欠け望ましくありません。標本のラベルに使用するのであれば耐アルコール性のものを使用すべきです。
国立科学博物館ではアメリカの会社のプリンターリボンを使用しています。このプリンターリボンは、ワシントンの国立自然史博物館でも採用されています。発注先は次のとおり。
担当者: Mr. Charles Chapman
会社名:Access Computer Printer Products, Inc.
住所:9700-AA Martin Luther King, Jr. Hwy.,
Lanham., Maryland 20706, USA
E-mail: acpp@erols.com

標本びん(蓋は手前においてある):左から140cc、225cc、450cc、900cc、2000cc


450ccのビンにラベルを巻き込むように入れたところ


ドットマトリクスインパクト方式のプリンター



布にナンバーリングで登録番号を印字して、コロジオンの皮膜をかぶせた番号札
ドットマトリクスインパクト方式のプリンターであれば、どの機種でも問題はありません。上記の会社では見本としてプリンターリボンをカセットごと1本送付すれば、それに合わせてリボンを作成し、新しいカセットに入れた状態で納品してくれます。ラベルに印刷した文字は、アルコールに入れるとわずかに溶けるようですが、薄くなることもなく全く問題はありません。この会社は、もし問題がある時には製品を取り替えると豪語しており、かなりの年数使用しているワシントンでも問題はないようです。ただ過信は禁物であり、念の為、ラべルの他に番号札(布にナンバーリングで登録番号を印字して、コロジオンの皮膜をかぶせたもの)を標本びんに入れています。こうすれば万が一ラベルの文字が消えたとしても、データを再現できます。

レーザープリンターの問題点
レーザーブリンターは印字がきれいで、印刷速度も速いという優れた機能をもっています。フィラデルフィアの博物館のように、厚い紙にレーザープリンターで印刷した後、アクリルコート処理をして文字消失に備えているところもあります。数年経過しても特に問題は生じていないそうです。フィラデルフィアのラベルはスミソニアンやサンフランシスコの科学アカデミーの機能一本槍のラベルと比べると、デザインもよく、読みやすいのですが、欠点が無いわけではありません。脂肪分の多い標本(例えばサメ類)をアルコールに漬けておくと、脂が溶け出してきます。このような液の中に、レーザープリンターで印刷したラベルを入れておくと、ラベルが何かに触れたときに、文字が剥離してしまうのです。アクリルコート処理は剥離するまでの時間が遅くなるだけで、本質的な解決には何の役にも立たないという報告もあります(Curation News Letter, No.10 Spring 1990)。

なぜレーザープリンターはだめなのか
レーザープリンターの多くの機種では150度前後の熱によってトナーを紙に印刷しています。この際、トナーに圧力をかけて、紙に押しつけてはいません。したがって、アルコール液に入れた場合、剥離しやすいので利用は避けた方が良いでしょう。


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